(両陛下の沖縄ご訪問#1)昭和50年7月17~19日、沖縄国際海洋博覧会開会式

南部戦跡をご巡拝

沖縄は昭和四十七年五月十五日に祖国復帰を果たしましたが、その三年後の昭和五十年七月十七~十九日、皇太子同妃両殿下であられた両陛下は、沖縄国際海洋博覧会開会式にご臨席のため、初めて沖縄の地をご訪問されました。

左翼過激派が「皇太子訪沖阻止」を掲げて運動を展開する中でしたが、「石ぐらい投げられてもよい。そうしたことに恐れず、県民の中に入っていきたい」との強いご意志で、ひめゆりの塔、魂魄(こんぱく)の塔、島守之塔などの南部戦跡をご巡拝になりました。

最初の巡拝地「ひめゆりの塔」では、ひめゆり同窓会二十名が整列してお迎えする中、両陛下は大きな白菊の花束を手に歩を進められ、塔の前で深々と黙祷を捧げられました。

ご拝礼を終えられ、ひめゆり同窓会会長・源ゆき子さんがご説明申しあげようとした矢先のことでした。ひめゆりの塔が建っている地下壕から突然、隠れていた過激派二人が現れ、両陛下に向かって火炎びんを投げ付けました。

火炎びんは献花台に当たって炸裂。周囲が混乱に陥る中、警備の者たちは慌てて両陛下に避難いただくよう誘導しました。ところが、陛下は「私は大丈夫。源さんはどうしたか。源さんを見てあげて」とおっしゃられ、なかなか下がろうとされません。警備の者は半ば力づくで陛下をお車までお連れしたのでした。

突然の火炎びんの投擲(とうてき)にも動じられず、ご自身よりも案内役の源さんを気遣われる陛下の高潔なお姿に、その場に居合わせた人々は大きな感銘を受けたのでした。

陛下は、昭和五十一年の歌会始で次の御歌をお詠みになりました。

お題『坂』
みそとせの歴史流れたり摩文仁の坂平らけき世に思ふ命たふとし

(編注:みそとせ=三十年、たふとし=尊し)